
4月の桜花賞(G1)を圧巻の末脚で制し、その動向が注目されていたデアリングタクト(牝3 栗東/杉山晴紀厩舎)が、5月24日のオークス(G1)に出走することが、所有するノルマンディーの公式サイトで明らかになった。
桜花賞で見せた走りは歴代でも屈指の評価を得ている。重(ほぼ不良)の馬場で、後方から大外一気の末脚で、2歳女王レシステンシアらをなで斬り。過去のアーモンドアイ、ハープスターを彷彿とさせる走りは、将来への期待を感じずにはいられないものだった。
父エピファネイアは2013年の菊花賞、2014年のジャパンCを勝利した中長距離の雄だっただけに、2400mのオークス参戦にも一切不安はないだろう。一時は「日本ダービーも視野」という報道もあったが、牝馬二冠を狙う道に決めたようだ。
この陣営の選択を、現場を知る記者は「当然」と語る。
オークス選択は当然
「日本ダービーに出走した場合、皐月賞で圧倒的なパフォーマンスを見せたコントレイル、最後まで食い下がったサリオスなど、当然ながら強豪牡馬を相手にしなければなりません。とりわけコントレイルの強さは『無敗の三冠か』といわれるほどのものでした。
『確実にG1勝利を積み上げる』なら、オークスとなるのは自然。2007年の日本ダービーをウオッカが制したのは64年ぶりですし、なかなか踏み切れないのはわかります。
一方、今年のオークスは、デアリングタクトに最後まで抵抗したレシステンシアは出走せず、過去のパフォーマンスを見てもデアリングタクトには及ぶ馬は見当たりません。3日のスイートピーSを完勝したディープインパクト産駒のデゼルはライバルの最右翼となりそうですが、3月デビューで2戦、戦った相手の質の低さや経験不足も否定はできません。前走の血統、強さ、相手関係……どこから考えてもデアリングタクト優位は動きません」
ハイレベルな牡馬決戦より何倍も現実的な牝馬二冠。となれば、オークス1本に絞るのは自然といえる。
先日落馬で負傷した主戦・松山弘平騎手も今週から復帰。オークスでの騎乗も予定されている。ベストコンビで無事本番を迎えられそうだ。
今回のオークス参戦に「ダービーに出てほしかった」という意見も多少あるが、馬主であるノルマンディーの“状況”を考えればそれも当然か。前述の記者が語る。
ノルマンディーの悲願と「岡田祭」
「ノルマンディーは2012年に発足したクラブ法人ですが、2019年までの活躍馬は主にダート。芝での活躍馬は、2017年のプラチナムバレットの京都新聞杯のみでした。デアリングタクトの桜花賞勝利は、同クラブ悲願の芝G1、クラシック制覇です。
ノルマンディーにとって、デアリングタクトはクラブの将来を左右する存在。牝馬二冠という栄光を確実に手にしたいはずです。当然ながら必勝態勢での参戦です」
今年の牝馬路線は、桜花賞3着スマイルカナがマイネル軍団の総帥、岡田繫幸氏所有の馬。フローラS勝利のが岡田氏傘下のウインレーシングクラブ、デアリングタクト所有のノルマンディーは母体は、岡田氏の弟・岡田牧雄氏の岡田スタッドだ。
いつもは「ノーザン系だらけ」にもなるクラシックだが、今年は「岡田氏祭り」の様相。それでもデアリングタクト一強は揺るがないだろう。現状、故障以外に大きな不安は何もない。
(文・取材/八代啓吾)