
JRAの福永祐一騎手が、5月3日の東京2Rをサイモンルグランで勝利。JRA史上5人目となる2300勝を達成した。
この日は京都で天皇賞・春(G1)が開催されていたので福永は「裏開催」での騎乗になったが、G1勝利以上の偉業を達成。新型コロナウイルスの影響で無観客開催が続き、祝賀セレモニーもなかったが、本人にとってはまた一歩レジェンドジョッキーに近づいた形だ。
今年は5月4日時点で41勝のリーディング5位。4位の松山弘平騎手とは1勝差、3位の武豊騎手とは6勝差と射程圏内であり、この勢いで順位を上げていく可能性も十分にある。
今年の勝ち鞍という面でも大きな期待ができ、2300勝も達成した福永だが、今年はそれ以上の「大偉業へのチャンス」が巡ってきている。現場を知る記者は語る。
コントレイル「無敗の三冠」現実味
「福永騎手のお手馬には、無敗で皐月賞を勝利したコントレイルがいます。皐月賞は昨年の朝日杯FS王者サリオスとの一騎打ちになりましたが、外を回してなお余裕を感じさせるレースぶりでした。サリオスも負けて強し、ではありましたが、ポテンシャルの面でもコントレイルが一歩リードしているという評価は揺るぎません。
これまでの走りぶりから日本ダービー、菊花賞と距離延長も問題なさそうですし『無敗三冠』という声も聞こえてきます。そもそも『ディープインパクトの最高傑作』と呼び声が高い存在ですし、今年もっとも注目される1頭といえそうです。
福永騎手はこの皐月賞で五大競走完全制覇を達成しました。今年は記録ずくめの年になるかもしれませんね」
世間が閉塞感に包まれている中、開催を続ける競馬は間違いなく希望を届けている。このまま無事開催を継続できることを祈るばかりだが、その中心に今、福永騎手がいるというのは決して大げさな表現ではないだろう。
今年の社会情勢を見るに秋の海外遠征などは不透明を極める。となれば、国内に腰を据えて活躍する道筋がベターだろう。コントレイルが三冠を成し遂げるかに注目だ。
また、福永騎手といえば、記録を達成するたびに「偉大な父」との比較もなされる。前述の記者の話。
「天才」福永洋一を父に持って
「福永騎手の父は、元中央競馬騎手の福永洋一さん。競馬史上でもっとも『天才』という表現がなされた名ジョッキーであり、悲運の落馬事故で引退、その後も後遺症が残ったエピソードでも有名です。
息子の祐一騎手は偉大な父の背中を追うように騎手デビューし、初年度から有力馬の騎乗が多かったですが、それもまた『洋一の息子だから』と父のカリスマ性があったからこそといわれています。
ただ、祐一騎手は通算983勝だった洋一さんの倍以上の勝ち鞍をすでに上げています。もちろん『だから祐一のほうが上』と単純にいえるわけではありませんが、祐一騎手も自身の騎乗哲学を確立し、自分の道で活躍しているということ。
時折落馬事故でヒヤッとさせられる祐一騎手ですが、ぜひとも今後も長く活躍してほしいですね」
今春もコントレイルの他、安田記念には昨年の最優秀短距離馬インディチャンプで連覇を狙うなど、お手馬にも恵まれている。ルメール、武豊あたりに注目を奪われがちだが、終わってみれば今年は「祐一の年」になってもおかしくはない。
(文・取材/杉山良平・競馬担当)